一棟一棟丁寧に確実に
July 5, 2017
先日、上越市内にある新築工事中の建物内の気密試験を完了しました。
弊社では、原則、新築住宅は全棟気密検査を行います。以前のブログでもご紹介しました通り、気密試験では専用の気密測定器を使い、家の中の「C値」を調べます。おさらいですが、C値とは、家の延床面積に対する 「 隙間面積 」 の割合を示す数値で、床面積1㎡当たりどれ位(何㎠)の隙間があるのかを表した数値です。この値がゼロに近いほど、隙間が少なく、気密性が高いことを意味します。
C値 = 家全体の隙間の合計(㎠) ÷ 延床面積(㎡)
今回の結果は・・・
C値 =0.2㎠/㎡
当地域ではほぼ最高クラスの数値になりました。
以前のブログ(「すき間だらけの日本の住宅」/「住まいの呼吸法」)でもご紹介したように、日本の既設住宅の90%以上が今回の値の25倍の大きさにあたるC値=5㎠/㎡以上と言われていますが、実際のところ、まだ多くの住宅会社ではまだ測定すらしていないため実態は不明です。なぜならば、このC値の測定は、改正された省エネ基準法でも義務化されていないからです。それに対し、私たちが自主基準としているのは、C値=0.5㎠/㎡以下。40坪の家であれば、隙間は名刺1枚分程度というレベルを必達条件としています。今回の数値は、その半分以下であるC値=0.2㎠/㎡。数値としては当地域で最高レベルです。もっとも、C値は0.5を切れば気密性としては十分な性能値になりますので、この数値ばかりを追い求めることは本筋ではありません。
ちなみに、私たちの断熱・気密施工は、通常のグラスウール断熱材(袋状の断熱材)を敷き詰めていく工法ではなく、断熱性能としてもトップクラスのフェノールフォームパネルを隙間なく設置する断熱工法を採用しています。工場で正確にカットされたパネル材が柱や梁とがしっかりと密着しており、基本的に接合面の隙間が発生しにくい構造となっています。さらにそこに気密テープで接合部分を完璧に塞いでいるため、基本、ミリ単位の隙間は発生しない構造になっています。
この隙間の大きさが与える住宅の温熱環境の差は歴然です。これが夏冬の冷暖房機器の運転効率に大きな影響を与え、結果として年間の光熱費が大きく変わります。また、隙間があるかないかは、即ち結露→カビの発生の有無に影響し、長年にわたって住まいの健康と人体の健康に大きな影響を与えるものになるのです。なお、未だに「住宅を高気密化すると息苦しい家になる」「空気が悪くなりかえって不健康になる」「家の寿命が悪くなる」という誤った主張をされている業者さんもおられるようですが、これは全く根拠のない都市伝説です。現在の住宅は24時間換気システムの導入が義務化されており、時間当たりの換気回数も建物の種別によって明確に規定されています。「なんとなく隙間風が通る家の方が健康」と家の気密性を中途半端に落としてしまうとかえって換気効率が阻害され、健康被害を招く原因となり危険です。しっかりとした科学的な根拠をもって住宅の断熱・気密性能を理解する必要があります。
私たちのこの隙間の小さな家づくりは、設計段階における工法の選定と、施工段階における緻密なチェックと丁寧な施工作業の徹底によって生み出されます。私たちの施工現場では、専任監督がしっかりと目を行き届かせ、一棟一棟丁寧に確認しながら作業を進めています。また、勉強熱心で気密に関する理解がある優秀な大工チームがパートナーにいることも重要な要素です。
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社長のMUSIC BOXから(vol.8)
July 4, 2017
代表猪又の趣味でセレクトされているモデルハウスのBGMからのアーティストピックアップ、今回ですでに8回目!ネタは尽きません(笑)前2回は、伝説のジャズミュージシャン2名にスポットを当ててみましたが、今回はぐっと現代に寄り、ウェブ時代のミュージックシーンに触手を伸ばしてのご紹介です。
まずは、こちらをご覧ください。
今回ご紹介するのは、「Jhameel(ジャミール)」。1989年アメリカ・ミネソタ州出身。カリフォルニア大学バークレー校卒業。現在サンフランシスコ在住の20代。韓国、日本、モンゴルの血が流れていますが、スペイン、アラビア語等、他国語を自在に操ることができます。作詞・作曲・アレンジなどを全て自らがこなし、ファッション・ブランド「FOREVER21」のコレクション・ムービーへの楽曲提供なども行っている、とても才能に溢れた若きアーティストです。
上記の映像は、自ら演奏する様々な楽器のフレーズと歌声をリアルタイムで多重録音しながら一つの曲に仕上げていくという面白いアプローチの映像を自らyoutubeで公開。この他にも自らが監督・出演した本格的なMVや、自宅で泥酔しながら弾き語りを行う映像をそのまま動画サイトにUPするなど、セルフメイドなスタイルが話題を呼び、日本でも一時注目を集めました。ちなみに、Jhameelというステージネームは、留学生のレバノン人に付けられたあだ名からだそうです。現在のネット社会が生んだまさにボーダーレスなサウンドと表現スタイルが彼の持ち味です。
そんな彼の独特の世界観が凝縮された楽曲は、ポップ、ハード、メロディアスと非常に幅広く、そこに彼自身の強烈なキャラクターとセクシーな歌声が合わさって、聴く人に様々な印象を与えています。キノイエのモデルハウスでは時々、比較的ポップなテイストの以下の3曲がBGMとして流れています。”Waves”、”Pursuit of Glory”、”White Lie”の3曲を続けてどうぞ。
いかがでしたか。これまで、このコーナーでは、比較的オーソドックスで音楽の歴史的にも不動の評価をもつアーティストのご紹介が多く、ある意味やや回顧主義的な側面もありましたが、今回のJhameelのように、時代の流れの中で何か特別な光るものをもった新しいアーティストにも今後スポットライトを当てていきたいと思います。次回もどうぞお楽しみに。
<過去の記事>
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20年の歳月をかけて
July 2, 2017
前回のブログで、伊勢神宮の話題に触れましたが、本日はその続きで、ちょっとした建築のお話です。
御稲御倉(みしねのみくら)
写真は伊勢神宮の内宮にある「御稲御倉(みしねのみくら)」。御稲御倉は、内宮の30社ある所管社のうち第6位の社格を持っています。創建年は不明ですが、推定では600年から750年前からだといわれています。御稲御倉には、神嘗祭にて神様へお供えするイネが約1年分ほど納められています。
外幣殿(げへいでん)
またその近くには、外幣殿(げへいでん)があります。神宮会館HPによると「ご正宮瑞垣内の東宝殿を内の幣帛殿(へいはくでん)とすれば、これは外の幣帛殿にあたるものである。古くは皇后陛下・皇太子殿下の幣帛や古神宝類を納めていたが、現在は古神宝類が納められている。」とあります。
さて、今回はこの2つの建物にご注目。
神社本殿形式の一種で素木造 (しらきづくり) 、前回のブログでもご紹介しましたが、屋根は切妻造で、正面に向かって屋根の勾配が流れている「平入り」(左右に屋根勾配が流れる形を「妻入り」といいます)とよばれる形をとっています。屋上に千木 (ちぎ) 、鰹木 (かつおぎ) を載せ、両側面に棟持柱 (むなもちばしら) を立てています。このような一連の伊勢神宮の様式を特に唯一神明造(ゆいいつしんめいづくり)といいます。
しかし、写真をご覧になってお分かりのように、この棟持柱と呼ばれる丸い柱は、正確には屋根を支えていない状態であることが分かります。これは、中に保管されているお米等に虫がつかないようにするための工夫で、収納壁の横板を上からの屋根の重みで押さえ、常に隙間のない状態をつくります。よって丸い柱は常に浮いた状態。屋根は年月をかけてゆっくりと沈み、この丸い柱の先端と屋根とが合わさるのがなんと20年後。それが式年遷宮として決められた年数となっているのです。
20年かけてこの建物の機能は役割を全うし、式年遷宮を迎えます。何百年以上も前の当時の建築理論と技術にただただ敬服するばかりです。
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男神様と女神様
June 30, 2017
先日、とある研修旅行で伊勢神宮を参拝してきました。
伊勢神宮と言えば、皆様もご存知の「式年遷宮(しきねんせんぐう)」は、1300年にわたり繰り返されてきた儀式です。20年に一度造り替えられる常に瑞々しいご社殿で、永遠に変わらないお祭りが行われることに大きな意義があります。直近では、平成25年に行われた62回神宮式年遷宮が記憶に新しいところです。
ところで、「神社」には、神様によって建築様式に違いがあり、実は、日本国の神様は、天孫降臨からの「天津神様」、そして元々日本国に遷座されていた「国津神様」という二つの派があるということをご存知でしたでしょうか。それが、神社の形を見分けることで、どちらの派の神様をお祀りしているかが大体わかります。
まず、「天津神様」の社と「国津神様」の社の大きな違いは屋根勾配の向きです。「天津神様」を祀る社は、拝殿の屋根勾配が正面、つまり参拝者側に向けて流れている「平入り」と呼ばれる形式で、「国津神様」を奉る社は、左右に屋根勾配が流れる「妻入り」という形式になっています。
糸魚川市一の宮にある「天津神社」は、屋根勾配が正面と背面に流れる「平入り」様式
伊勢神宮(内宮)から伊勢街道を800m程のところにある国津神社である「猿田彦大神」は、屋根勾配が左右に流れる「妻入り」様式
そして、それぞれに女性神と男性神があります。それもまた屋根の上に注目です。こちらをご覧ください。
多くの神社は、屋上に千木 (ちぎ) 、鰹木 (かつおぎ) を載せてありますが、「男神」は千木が外削ぎ(先端を垂直に切り落としてある)で、鰹木が奇数本。「女神」は千木が内削ぎ(先端を水平に切り落としてある)で鰹木が偶数本になっています。
例えば、出雲大社ならば男神である大国主命(おおくにぬしのみこと)を祀っているので、本殿の千木は外削ぎで、鰹木は3本(奇数)です。
それに対し、伊勢神宮では、なぜか少し様子が違います。内宮の「天照大神」、外宮の「豊受大神」共にどちらも女神様であるはずなのに、外宮は男神の様式になっています。具体的には、内宮は摂社、末社、別宮、所管社まですべて千木は内削ぎで、鰹木は偶数であるのに対し、どういうわけか、外宮は摂社、末社、別宮、所管社まですべて千木は外削ぎ、鰹木は奇数という男神の様式になっており、神宮内の125社すべてが男、女神関係なく統一されています。これには外宮が男性的性格だからではないか、という他、「天照大神の岩戸隠れ」をはじめとする神話の歴史に関係した様々な説があるようです。
伊勢神宮の内宮にある外幣殿
伊勢神宮の外宮にある風宮
このあたりは、非常に奥が深く、このブログではなかなか紹介しきれませんが、ご興味がある方はぜひ日本の神々にまつわる歴史を紐解いてみてはいかがでしょう。ちなみに、伊勢市の観光協会や商工会議所では、こうした伊勢神宮にまつわる様々な解説を行える専門ガイドの紹介も行っているようですので、伊勢神宮に参拝される際はご利用されてはいかがでしょう。
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雪の香テラス
June 29, 2017
先日のキノイエ生誕1周年記念イベントでも登場した上越地域で唯一のお茶の製造元「正香園」様が、新しく立ち上げたスウィーツブランド「雪の香テラス」。以前にもご紹介しましたが、北陸新幹線上越妙高駅西口の商業施設「フルサット(FURUSATTO)」で7月22日にグランドオープンの予定です。
現在、弊社は、その店舗新設のお手伝いをさせていただいています。店舗の本体は、フルサットにある既存店舗と同様、コンテナを利用。そこに、弊社オリジナルの設計による内外装を施したお店が出来上がる予定です。今月初頭には、韓国からコンテナが船便で到着。早速、内外装工事に取り掛かっています。
現在、既にテラス席も設置され、いよいよ工事は佳境に向かっています。
完成イメージはこのような感じになります。
「雪の香テラス」様は、北陸新幹線上越妙高駅西口の商業施設「フルサット(FURUSATTO)」で7月22日にグランドオープンの予定です。どうぞお楽しみに。
ちなみに、上越支店では、キノイエ1周年イベント以降、リラックスタイムの飲み物が、コーヒーからお茶へと変わりました。イベントの際も、「おいしいお茶の淹れ方」というテーマで、正香園の松木代表からレクチャーいただきましたが、たしかに、ちょっとした淹れ方の違いで、毎回味が違います。上手に入れられた時、そうでもない時が分かります。とても奥が深い・・・
杉ノ上支店長のデスク
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まずは私たちから健康に
June 27, 2017
カネタ建設には、介護事業部が運営している運動・認知機能訓練型デイサービス「らっくねす」という施設があります。『これからも、今までのように』をキャッチコピーに、住み慣れた自宅でいつまでも自分らしい生活を送るための力を維持、復活させるお手伝いをするのがこの施設のお仕事。デイサービスという福祉施設の形態でありながら、運動を通して要介護・要支援からの卒業を目指するというコンセプトが、健康志向の高い大勢の方々に支持され、現在、糸魚川市内で利用者が拡大しています。
そのらっくねすでは、この度、社員を対象に無料開放日を設けました。
毎月第3水曜日の夕方、カネタ建設の社員を対象に、らっくねすのインストラクターによる直接指導で、自分の体の状態に合わせた様々なエクササイズ、トレーニングを体験することができます。
メニューの中でも特に人気が高いのは、ノルウェーで医療器として開発され、医療機関、福祉で幅広く使用されている「レッドコード」を使用したエクササイズ。 赤いロープ(スリング)で身体に不安定な状態を作り出し、バランスを保った状態でエクササイズを行う事により、神経筋機能を改善し、運動技能を向上させる治療機器です。体幹を安定させるために使用する筋肉=インナーマッスルのエクササイズに優れています。ちなみに、この器具を用いた専門的なエクササイズは、上越地域ではこの「らっくねす」でしかできません。
また、筋肉や脂肪、骨など体を構成する組織「体組成」を推定して表示する最先端の「体重体組成計」も完備しています。肥満の予防・改善をはじめ健康管理を行うには、体重だけではなく、体脂肪率の測定、さらにその脂肪の内容(皮下脂肪か内臓脂肪か)や筋肉率の測定など、「体組成」をチェックして体のバランスを知ることが非常に重要で、この施設では、ご利用者の皆様が毎回ここで自分自身の体組成を知ることで、自分の体の状態を確認することができます。
私たちが、住宅づくりだけでなく、こうした介護や健康増進事業を行っているのも、全ては「暮らし」を第一に考えているからです。「住み慣れた自分の住まいで、家族と共にいつまでも健康に暮らす」ことこそが、幸せな人生につながるのではないでしょうか。住まいをつくることは、その一部であり、スタート地点であるとすれば、この「らっくねす」での取り組みは、それを持続させ、長い人生に活力を与えるエンジンのようなものではないかと思います。だからこそ、そういうサービスを提供する私たち社員が、まずは健康な暮らしの具現者でなければいけません。
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社長のMUSIC BOXから(vol.7)
June 26, 2017
前回に続いて、今回も、非常にスタンダードでかつ王道のジャズ・ミュージシャンをご紹介いたします。ジャズ愛好家の皆様にとっては、教科書の1ページに出てくるようなアーティスト第2弾。
今回ご紹介するのは、John Coltrane(ジョン・コルトレーン)です。1926年アメリカ ノースカロライナ州生まれのモダンジャズのサックスプレーヤー。ジャズファンの間では、「晩成型の巨人」と呼ばれたアーティストです。
13歳でクラリネットを始め、後にアルトサックス、テナーサックスと転向しながらいくつかのバンドを渡り歩いた彼の無名時代は長く、メジャーな舞台で活躍した期間は10年余りでしたが、その間にジャズ界の歴史に残る作品を残していきました。
まずは、こちらをお聴きください。代表猪又のお気に入りのアルバムです。
これは、彼の作品の中でも異色でありながら多くの人に親しまれている入門的なアルバム「Ballads(バラード)」。こちらも、気の利いたオーセンティックバーであれば定番BGMとして流れている名盤です。キノイエのモデルハウスでもこちらをよく流します。
彼がブレイクしたきっかけは、演奏方法の劇的な変化でした。初期のコルトレーンの演奏は、正直なところ非常にリズムが悪く、それが最大の弱点でした。しかし、彼はそれを逆手に取り、連符を詰め込む演奏方法を編み出し、数小節、時には数十小節単位の、大きな塊のリズム・グルーヴを生み出すことに成功。この切れ目なく続くサックスの音は「シーツ・オブ・サウンド」と呼ばれるようになりました。これにより、徐々にコルトレーンの名がジャズシーンに知られるようになります。そして、彼の名声が不動のものになったきっかけの一つは、当時既にジャズ界の大スターであり、後に「ジャズの帝王」と呼ばれたMiles Davis(マイルス・デイビス)のバンドに2度目の加入をした際、彼の絶大な評価を受けたことからです。
以下は、彼が1965年に発表したスタジオアルバム「A Love Supreme(至上の愛)」です。彼の演奏の醍醐味が凝縮されたアルバムの一つです。
いかがでしたか。ジャズはとっつきにくいとお考えの皆様でも、少し興味を持たれたのではないでしょうか。よい音楽との出会い、そして、よい住まいづくりで最高の地元ライフを。
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省力化してはいけない部分
June 24, 2017
キノイエの設計段階のラフスケッチをご紹介します。こちらは、現代町家の提唱者でもあり、キノイエのアドバイザーとして外部協力いただいている建築家の趙海光(ちょう うみひこ)先生より描き下ろしていただいているものです。
キノイエの設計における心臓部は、ベース(本体部分)とそこにドッキングさせるゲヤ部分との位置関係。まず、ベースとなる本体部分は6m×6m、あるい6m×8mの総二階の構造を基本に据え、主たる生活空間として何が重要かを動線を含めて徹底的に考えます。そこに必要となる付加すべき居住空間の機能を考えてゲヤ部分を決定します。ただ並べるだけではなく、ずらす、離すなど、この位置関係を工夫することによって、離れ部屋が生まれたり、リビングが拡大したりとあらゆる可能性が広がります。
ちなみに、このラフスケッチ案では、ベースをナナメに振っています。そうやって振ることで、ベースの周りに庭が生まれ、ソトを上手にナカに取り込むことはできないか、ベストな視界が生まれるのではないか・・・と考えたりするわけです。なお、ベースをナナメに振ってはいますが、基本構造がシンプルにできていますので、建築コストが驚くほど跳ね上がったりはしません。
本体の構成はシンプルながら、内部の位置関係は、そのご家族のライフスタイルを念頭に、このように徹底して考え抜いていきます。自由設計は高く、プランをパターン化してある量産型の規格住宅は安いと単純に考えてしまいがちですが、重要なのは、構造的なコストダウンを図りながらも、ソトを生かしたナカの空間の広がり、あるいは実際の生活動線の最適解を導き出すために徹底して英知を絞り出すことではないかと思います。ハードは省力化しても、暮らし方の検討は省力化してはいけません。そういう意味で、住宅設計のプロとしての力量が試される部分は大きいと考えます。
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社長のMUSIC BOXから(vol.6)
June 23, 2017
代表猪又の趣味でセレクトされているモデルハウスのBGMからのアーティストピックアップ、今回で6回目を迎えました。ブログの中でも書き手がワクワクする、個人的趣味を披露するラフな記事。したがって、かなりのハイペースでシリーズ化が進んでいます(笑)
さて、これまで過去5回に渡って紹介してきたアーティストは、全て歌手を主体としたものばかりでしたが、ここで箸休め。今回と次回の2回については、非常にスタンダードでかつ王道のジャズ・ミュージシャンをご紹介したいと思います。ジャズ愛好家の皆様にとっては、教科書の1ページに出てくるようなアーティストです。ジャズ・ミュージシャンをよく知らない方にとっては、ある意味、BGMでこれをかけておけば恥をかかないといった2人です。
今回ご紹介するのは、ジャズ・ピアノの巨匠Bill Evans(ビル・エヴァンス)。1929年アメリカニュージャージー州のプレインフィールド生まれ。モダン・ジャズを代表するピアニストと言えば、誰もが彼の名前をまず思い浮かべるほどメジャーな存在ですが、実は、私生活では麻薬の常習者という側面をもち、生涯にわたってその呪縛の中で異才を放ち続けたアーティストです。
エヴァンスの名前が世に広まったのは、彼が若き頃、モダン・ジャズの帝王と呼ばれたジャズ・トランぺッター、マイルス・デイビスに才能を認められ、常任ピアニストとして雇われたことから始まります。しかし、既に麻薬の常習者であったエヴァンスは、白人としての逆差別も重なり、半年でマイルス楽団を解雇されます。それでも、マイルスは、エヴァンスのピアノが忘れられず、再びエヴァンスを召集し、1日限りの共演が録音されますが、それこそが1959年3月22日、ジャズ史に残る金字塔として録音された「Kind of Blue(カインド・オブ・ブルー)」というアルバムです。エヴァンスのピアノの最大の特徴は、コード進行にとらわれず、モダンな音色や響きを重視したアドリブを駆使した演奏にあります。それは今でこそジャズシーンでは当たり前のようになっていますが、当時それまでのジャズが経験したことのない音楽空間を生み出したことで、音楽業界に大きな衝撃を与えました。
下にあるリンクは「Kind of Blue」のアルバムより。50分以上ありますので、抜粋して聴いてみてください。
そして、なんといっても彼の代表作といえば、‟Waltz For Debby(ワルツ・フォー・デビー)”。
この曲は、姪っ子のデビーに捧げられた曲で、当時まだ2歳であったかわいらしい姪っ子の様子を、愛情たっぷりに表現した珠玉の作品です。最大の魅力は、トリオ演奏としては唯一無二の息の合った素晴らしい音楽空間。ベースのスコット・ラファロ、ドラムのポール・モチアンとのコンビネーションにぜひ注目いただきたいと思います。
気の利いたオーセンティックバーでは、時折この曲が流れています。名曲は場所と酒を選ばない・・・ぜひ、行きつけのお店でBGMに耳を澄ましてみては?
代表猪又はシングルモルトウィスキーが大好き。写真はスコッチの中でも人気の「Laphroaig(ラフロイグ)」の新作「Impressive Cask」。独特のスモーキーさがウリのラフロイグの中でも、非常にパンチの利いた香りが楽しめます。ちょっと臭いウィスキーがお好きな方はぜひお試しあれ。
<過去の記事>
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家族のタイムテーブル
June 21, 2017
住宅建築業界の中で、現在5万部を超える人気の書籍となっている『住まいの解剖図鑑』。もともとは住宅設計を学ぶ建築系の学生向けに書き始められたものが、設計実務を始めたプロ向けの基本を学ぶコンテンツとして進化、さらには、「もしかすると、これから自宅を建てようとする一般の人にも、最低限身これくらいの知識は身につけてもらってもいいのでは?」との思いから加筆修正が加えられて生まれたのが本書です。
そのため、本当にいい家を建てたいと考えている方の中で、非常に敏感な方は既にこの書を手にしているかもしれません。これを読めば、家づくりで本来見失ってはいけない非常にコアな部分に触れることができ、コンビニ化した住宅業界のパッケージ住宅を買うことが、いかに勿体ない買い物であるかということに気付かされます。あるいは反対に、「中途半端なプロ」が陥りやすい「過剰設計」の落とし穴についても厳しく指摘しているバランスの取れた指南書です。私たちから見ても非常にユーザー目線で書かれた良書だといえます。
著者は、住宅設計の第一人者である故吉村順三氏の下で9年間学んだ建築家の増田奏(ますだ すすむ)氏。「家族が日々の暮らしを営み、生命を育む「住まい」に何より大切なのはその場所が「心地よい空間」であること。」と提唱する氏の著書の中には、実は、私たちキノイエが大切にしている住まいの要諦をほとんど網羅しており、私たちにとっても非常にわかりやすい住宅づくりの教科書といっても過言ではありません。
特に、「心地よい家のプランは「引き算」でつくる」という増田氏の設計理念は、キノイエの「小さくつくって大きく暮らす」「引き算の設計」そのもの。本日は、そんな増田氏の著書の中から、独自の視点で書かれた、とても参考になる項目を一つご紹介したいと思います。
その名も「家族のタイムテーブル」。
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私は必ずご家族のタイムテーブルを書いてもらっている。家を建てる時点での家族構成や年齢にぴったり合うようにつくり込んでしまうと、早ければ5年で住みにくい家になってしまうことさえある。人間は必ず年をとるものだからだ。
そこで私がお勧めしているのは「割り算」。すなわち子どもの成長、あるいは両親との同居の可能性などもあらかじめ想定して間取りの可変性を確保しておこうというものだ。
例えば部屋にはドアを2つ付けておく。子ども部屋なら小さいうちは2人で1つの部屋でいいが、自立心を持ち始めたり、受験の時期が来たら間仕切って個室2つに分けられるようにしておく。子どもたちが成長して巣立った後は、もとの1部屋に戻してもいいし、別の空間として利用することを考えてもいい。部屋に出入り口が2つあると可変性はもちろん、住まいの動線に回遊性が生まれ、格段に住みやすくなる。
可変性の確保や間取りをルーズに考えるという発想は、そもそも日本の伝統的な住まい方だ。今でこそ日本の家もダイニングやリビング、寝室など、空間の用途によってプランニングされるようになったが、かつては6畳間、8畳間など、空間の広さだけが認識され、部屋名などなかった。昼間は卓袱台を出して家族でご飯を食べ、近所の人がやってきて一緒にお茶を飲み、学校から帰ってきた子どもが宿題をする空間で、夜になると布団を敷いて寝ていたのだ。
こうした暮らし方は、今でもそれとなく伝承されている。例えば小学生ぐらいまでの子どもは自分の部屋ではなく、両親と一緒に、いわゆる川の字になって寝ているケースが多いだろう。欧米の住宅では考えられないことだが、この柔軟で臨機応変な住まい方こそ日本の住宅の特長だ。
家づくりでは、建築家やハウスメーカーなどの専門家の提示するさまざまなプランを検討する中で、自分たちがどのように新しい家で暮らしていくのかがだんだんと整理されてくる。その過程で大切なのは、専門家や知人が勧めるからなどと人まかせにするのではなく、最後は自分たち家族でこのプランにすると「決心」することなのだ。
車なら実際にいろいろな車に試乗し、比較検討した上で決められるが、家の場合は、いろいろな家に同時に住んでみて実際の住み心地を比較検討して決めることなどできないからだ。自分たちで決めたのだということで、この家でこんな暮らし方をしていくとの覚悟もできる。かくして、わが家はまぎれもなく自分たち家族にとってかけがえのない最も心地よい空間になっていくのではないだろうか。
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いかがでしょう。家づくりは、一生に一度と考えたとき、相手が「住宅のプロ」だと過信し、自分たちの思考を止めて全てを委ねてしまうことは、いずれ大きな後悔につながります。こうした視点を持つことで、皆様にとって本物に相性の良い家づくりパートナーを見分けることができるのではないでしょうか。
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