玄関ホールを使い倒す
September 13, 2016
住まいの設計で、多くの人が壁に当たるのが、「膨らんだ間取りをいかに縮めるか?」という問題。予算とのにらめっこでいちばん神経をすり減らす部分です。夢をたくさん詰め込めば詰め込むほど、それに比例して間取りは大きくなるものです。
そこで、キノイエでは、最初から間取りの足し算ではなく、「引き算する設計」を軸にしたプランニングを行っています。引き算する設計には、様々な極意があります。その一つは、「使わないスペースを極力排除する」、あるいは、「使う頻度の少ないスペースを極力縮める」です。そしてもう一つの方法、それは、「あまり使わないスペースを多機能化して使い倒す」です。
平牛の家 玄関ホール
その分かりやすい一例が玄関ホール。玄関ホールが使われるのは、自分たちの出入りと来客対応時。つまり、使うタイミングは非常に限られており、実際は閉じられたままで使われない時間の方が圧倒的に多いのです。見栄を張らない限り、本来のスペースとしては最小でいいということになります。小さくつくって大きく暮らす設計では、ここを小さくすることが原理原則になっています。
平牛の家 玄関ホールから外へのアクセス
しかし、キノイエでは、あえてこの玄関ホールを普通よりも広く取るケースがあります。まさに、「どうせあまり使わないスペースなら多機能化して使い倒す」の発想です。写真のように、塩屋新田の家、平牛の家どちらも玄関ホールはあえて広く土間スペースを確保し、リビングの中に取り込んでいます。リビング自体の設計面積は、わずか11~15帖程度とかなりコンパクトなのに、この玄関ホールを取り込むことで、こんなにも広々した空間に変わります。そして、この土間空間こそが、外のデッキスペースや庭、離れスペースなどに接続するハブのような存在となっており、一日の流れの中で幾度となく使われる、まるで第二の勝手口のような機能を果たしてくれます。
平牛の家 リビングから玄関ホール(障子で玄関ドアホールを隠した状態)
塩屋新田の家 玄関ホール(引き戸により、土間部分を2つの空間に仕切ることが可能)
「でも、来客があった時は丸見えじゃないの?」という疑問の声が聞こえてきそうですが、ご心配なく。たった一枚の引き戸を入れておくだけで、その時だけ空間を一度遮断し、小さな玄関ホールをつくります。そうすることで、急な来客や宅配便の受け取りなども、プライバシーを確保しながら応対が可能になるのです。
使う頻度が少なければ、発想を変えてよく使うスペースに取り込む。ちょっとしたことが大きな意味を持つ、引き算する設計のちょっとした極意。その一部のご紹介でした。
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木の家マルシェ
September 10, 2016
昨日、お役立ち情報誌『キノイエ タイムス』発刊の話題をお伝えしましたが、本日はその中のイベント情報の一つ、「木の家マルシェ」についてご紹介します。
この上越地域で暮らす人たちの手による、この地域で生まれたモノや技術。その中でも、暮らしに身近で彩りを与えてくれる選りすぐりのモノ、コトを集め、実際の住まいと暮らし方を通じてもっと多くの方に感じていただきたい・・・そんな思いで企画させていただきました。
『木の家マルシェ』とは、衣食住の分野における『地産地消』の大切さと『安心・安全・健康 』な暮らしに共感する仲間たちの手によってつくられる「小さな暮らしの市場」です。
会場は、キノイエ上越モデルハウス「塩屋新田の家」。まちの中にある小さなお家そのものがマルシェの会場です。ぜひ、ご近所を訪ねる感覚で足をお運びください。
今回、この考えに快く賛同していただき、マルシェに出店していただけることになった皆様はこちらです。
こびと窯〔天然酵母パン〕
”イースト”や市販の”天然酵母”は一切使わず、自家採取、自家培養の5種の自家製天然酵母を使用。古来の遠近赤外線の輻射熱による”石窯焼き”を再現したオーブンによって、 パンの風味や香りをぎゅっと閉じ込め焼き上げます。 小さいお店ですが、リピーターさんが多い人気店。
農業組合法人
ファーム富岡〔上越の米(新米)〕
地元で育ったお米を生産者がそのまま地元の食卓へお届け。
遠方のご親戚へ送られている方も多数。野生のサギ達もエサを求めてくる田んぼで化学肥料や農薬をできる限り使用しない安心安全なお米づくりにこだわり、一粒一粒大切に育て、今年で10周年を迎えました。
土の香工房
cotocoto〔乾燥食材〕
「発酵のまち上越」・「上越の自然豊かで四季折々の美味しい素材」を地元をはじめ全国に発信。厳選した上質な素材を手間と時間をかけじっくりと乾燥。地域に根差した食材で安心安全はもとより、天然の酵素や旨みが活き活きと凝縮されたドライ商品や塩糀をお届けしています。
スウィーツ工房
くみ〔焼き菓子〕
自宅で店舗を持たず、注文販売をメインに営業。お米つくりからお菓子つくりまで一貫して行い、添加物は一切不使用。素材にこだわり、妙高市産こしひかり玄米粉を100% 挽いて使用しています。玄米に豊富に含まれるビタミンや食物繊維などの栄養がまるごとスイーツに。
みなさん、本当にこの地元上越が大好きで、お話を聞けば聞くほど、その溢れる思いに感動を覚えます。また、その気持ちが商品づくりにも表れています。こうした仲間たちのネットワークが、この地域の暮らしにもっともっと広がり、自分たちの暮らすまちに誇りをもてるような文化が生まれるといいなと思います。
また、このマルシェは皆さんの反応を見ながら、今後も随時開催していきたいと思います。出店仲間も募集中です。こだわりのお店情報は、またこちらでも少しずつご紹介していきたいと思いますので、上越地域のこだわり情報をお持ちの方はぜひこちらまでご連絡いただけると幸いです。
開 催 日: 2016年9月18日(日)
時 間: 10:00a.m.~4:00p.m.
場 所: キノイエ 上越モデルハウス「塩屋新田の家」
新潟県上越市塩屋新田地内(きらめきタウン内)
https://goo.gl/maps/Sy7W184KAcz
お問合せ: 0120-470-456(キノイエ係 担当:藤田)
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『キノイエ タイムス』発刊します
September 9, 2016
来週、ちょっとした刊行物が新聞折込に入ります。
その名も『キノイエ タイムス』。
地元上越地域で「最高の地元ライフ」を送るためのお役立ちマガジンとでもいったところでしょうか?キノイエが今後開催するイベント情報を中心に、より多くの皆様にキノイエの考え方について知っていただくための情報誌になります。
第1弾の今回、大きなテーマは3つ。
(1)木の家マルシェ(9/18(日))開催
(2)秋の暮らし方見学会(9/24(土)・25(日))開催
(3)暮らしの勉強会(10/8(土)・9(日))開催
どれも、キノイエスタッフたちが、純粋に自分たちのやりたいことをカタチにしようと企画したプチ・イベントです。各企画の詳しい内容、開催に至った思い、ウラ話など、後日こちらでも少しずつご紹介していきたいと思いますので、どうぞお楽しみに。
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庭づくりの重要性
September 8, 2016
ずっと未完成状態が続いていた塩屋新田の家の庭が、このほどようやく完成しました。
ここまで完了が長引いたのは、竣工当時まだ計画中であった南側に隣接した建物の位置関係、外観の確定を確認した上で、リビングからの視界と、お隣さんからの視線との関係を見極めてからという事情がありました。庭づくりの成否は、隣接する家々との関係を考えてこそ成り立つものです。ソトを上手に取り込み、ナカの暮らしに広がりを生み出す庭の存在は非常に重要。だから、なるべく隣接建物の計画がある場合は、慌てずその完成を待ってから行うのがベターです。
今回の庭づくりにおいては、幸い、こちらのリビング側に面したお隣のお住まいの窓が水回りのすりガラス窓や収納室の窓が中心らしく、普段の生活シーンでほぼ直接的に目線が合うということがないということが分かりました。加えて、外壁もシンプルな黒単色の波型金属サイディングであったために、色彩的な干渉も少なく、周辺の視界を遮る役割も担ってくれています。結果としてプライバシー性の高い中庭のような空間になりました。母屋だけでなく、カーポートや離れとの連続性が生きるこの庭の利用価値はまさに無限大です。なお、西側の敷地はキノイエの住宅建設予定地でもあるため、塩屋新田の家とのつながりも考えて自由に考えることができ、2軒のつながりも含めてこれからのプランニングが非常に楽しみです。
完成といっても、本当の庭づくりは実はこれからが本番。庭に植えられた多くの植物たちがきちんと成長するように面倒を見ながら、小さな森をつくることが目標です。今回、庭木には、モミジやセイヨウカマツカ等の落葉樹に加え、ナンジャモンジャ等、四季折々の表情を楽しめる樹種を選びました。そして、ちょっとした遊び心で、中央に流木を配置。ちなみに、この流木、私たちの住む上越地域では、海岸に行けばそれなりに簡単に手に入る何の変哲もない代物ですが、所変わるとその価値は一気に変わります。特にこの上越地域から内陸部に位置する長野県内に住む方にとって、流木は非常に入手困難な高級品。おそらく、写真のサイズの流木だと、所変われば‟ん万円(?)”になる可能性もあります。
地元に眠る、こうした付加価値の高い素材に目を向け、暮らしの一部に反映させる・・・地元で生まれ育った私たちが家づくりで行うべき、とても大切な仕事であると考えています。家づくりを通して、ご家族にとっての「最高の地元ライフ」を実現すること。それが私たちの仕事です。
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建築家 趙海光先生からの応援メッセージ その2
September 7, 2016
キノイエの企画・設計・監修を担当していただいた建築家の趙海光(ちょう・うみひこ)先生から、素敵な応援メッセージの第2弾が届きました!現代町家の考え方を提唱し、全国の建築関係者から注目されているその道のエキスパートでもある趙先生が、私たちのために特別に寄稿していただきました。
趙海光(ちょう うみひこ)先生
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【その2 キノイエの職人さんたち】
みなさんこんにちは。残暑にあえぐ東京目黒から、二回目の応援メッセージを送ります。
前回は我が家のリフォームの話でしたが、こんどはキノイエの現場で出会った職人さんたちの話。とっても魅力的な人たちでした。ただし、実際にお顔を拝見したのは大工さんだけなんですけどね。なのにどうして魅力的だって分かるのか?
うん、そこが私たちの仕事の面白いところです。
図面を描くとそれが現場で実物になるって、当たり前みたいだけど本当は凄いドラマだって思いません?
実物ができるのは図面があるから、では図面にはいったい何が描いてあるのか。
形?寸法?素材?色?どれも大事ですけど、でもいちばん大事な情報は「どうつくって欲しいか」というメッセージなんです。
もちろん言葉でそう書くわけじゃなくて、あくまでもこれは寸法や素材を通しての密かなメッセージなんですけどね。このメッセージがうまく伝わるかどうかが図面を描く人間の腕の見せ所。たとえばキノイエの障子の図面に、私は桟の幅15ミリと描きました。図面を受け取った建具屋さんはきっと疑問を持ったはずです。———ふつうの障子は外枠と中桟の寸法が違うはずなんだけど、なんでこの図面はどこもみな15ミリなんだろう?
このとき建具屋さんに、「あーあ、このヒト(図面を描いたヒト)現場を知らないな」と思われたらアウトです。そう思われないために、図面を描く人間は寸法や形にメッセージをこめる。この障子の場合、図面に描かれた全体の形を見たとたんに建具屋さんの疑問は解消されたはずです(きっと)。「ああ、なるほど、そういうことか、ヨシムラ式ね。」
前にもこのキノイエブログのどこかで触れられていましたが、この障子はかの建築界のレジェンド「吉村障子」の変形バージョンなのです。
そのむかし吉村順三という昭和の大建築家がいて珠玉の住宅をつくりました。彼が編み出したのが升目の大きな荒間格子の障子です。で、その最大の工夫は中桟と縦框の幅を同じにしたところ。こうすると二枚の引き違い障子が、離れてみるとただの一枚障子に見えるんですね。
ところで正統の「吉村障子」は碁盤の目格子なのに、私の設計は縦格子で横桟は一本だけ。きっと職人さんは苦労したと思うのですが、その出来映えはなんとも見事なものでした。現場で完成した姿を見てちょっと感動。嬉しかった。
さてこんな話をしたのは、じつは心配だからです。———やがて職人さんとこんなふうに図面で語り合うみたいなつくり方はできなくなるんじゃないか。
いまはなんでも既製品の時代で、図面を介して職人さんと対話しながら手づくりするチャンスはどんどん減っています。当然のように職人さんも減ってますから、そのうち図面を描いてもそれを実物にするヒトがいない、なんてことになりそう。そうなると私も失業しちゃうわけで、うーん、これはピンチ。
でもね、こういう場合は明るくいったほうがいい。嘆いたって始まらないんです。嘆くよりは、どうやったらいまの既製品全盛の時代に職人さんの腕を活かせるかを考えるべきなんですよね。
というわけで、キノイエ設計チームではこう考えました。つまり、全部を手づくりにしようなんて思わない。既製品が活かせるところは既製品でOK。ただしいまでも手づくりのほうがリーズナブルなところだってあるのだから、その部分をなるべく増やそう。
そこで私が思い出したのはあるグループのことでした。
東京に「わざわ座」というのがあります。「わざわざ、やろうよ」を合い言葉にした職人、デザイナー、工務店の集まりです。彼らが考えたのは「職人が手仕事でつくる道具を、デザイナーが計画して、工務店が四方良しの価格で住み手に手渡す」というやり方。つまり「手仕事を活かすためのネットワーク」なんですね。
「四方良しの価格で」なんて、泣かせるじゃありませんか。大工さんに頼んでテーブルやキッチンを手づくりしてもらう、なんてことはこれまでにもよくありましたが、ここではそれをもっと組織的に計画的にやろうというわけです。
これをお手本にキノイエでも、障子に限らず他のところにもできるだけ手づくりのパーツを増やそうとみんなで知恵を絞りました。キノイエに置かれているソファー、テレビボード、パントリーなんかはそんな考え方から生まれたものです。
これらはみんなキノイエの大工さんが、新潟産の厚板を素材にして型紙(図面)からつくってくれました。型紙は保存されていますから、お望みならこれをお読みの皆さんにも同じものをお分けできます。(値段はたぶん家具屋で買うよりも安いはず。)
IKEAで量産品を買うのもよいですけれど、チャンスがあったらキノイエネットワークがつくる新潟産厚板クラフトワークの品々を使ってみませんか。そうすると地場の製材所や職人さんにもお金が回って、ちょっとだけみんなの暮らしが良くなります。
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趙先生、本当にありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。(キノイエ スタッフ一同)
趙 海光 ちょう うみひこ (一級建築士)
1972年法政大学工学部建築学科卒業。1980年(株)ぷらん・にじゅういち設立。
1990年代に台形集成材を使用した一連の木造住宅「台形集成材の家」を設計。
2000年代に「フツーの木の家」シリーズ。
2007年以降は町の工務店ネットと共同で「現代町家」シリーズに取り組む。
一貫して国産材を使用した現代型の木造住宅を設計するとともに、『住宅建築』誌を中心に木造住宅についての論考を多く発表し、国産材の開発と普及に努めている。
編著書に『高山建築学校伝説』鹿島出版会。
また『新建築住宅特集』に「在来工法ファイル」を連載(2004~2005年)
受賞歴
2011年 「びおハウス」により、チームおひさまのメンバーとしてグッドデザイン賞。
2009年 「博多・現代町家」により、町の工務店ネット、長崎材木店とともにグッドデザイン賞。
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床と天井の連続性
August 29, 2016
床から数十センチ浮いたテレビボード。
天井から壁がつながっていない和室。
手前に見えるパントリーもよく見ると、天井から少し空間が空いています。
二階の天井も同様に、水回りスペースの上は小屋裏収納がむき出しに・・・
お気づきですか?床と天井の連続性は、空間の広がりに直結します。
小さくつくって大きく暮らす。コンパクトでハイクオリティ、かつコストバランスのいい住まい。引き算の設計とは、単に間取りを小さくするだけではない、様々な工夫がちりばめられているのです。
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夏の終わり
August 28, 2016
もうすぐ夏休みも終わります。
皆様はこの夏、ご家族とどのような思い出をつくりましたか?私たちの暮らす上越地域は、海、山、川に囲まれ、望めばいつでも自然の恩恵に触れることができます。まさに、最高の地元ライフ。
こちらは、キノイエスタッフのある夏休みの一日です。
糸魚川市能生地区にある弁天岩。糸魚川の周辺の海岸は砂利浜が多くなりましたが、こちらの海岸は遠浅で砂浜もたくさんあるので、毎年家族連れでにぎわいます。
大胆なサービスショット!さて、どのスタッフの家族でしょう?
正解は代表猪又の家族。こちらは三女、まおちゃんでした(笑)
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『とと姉ちゃん』と『暮しの手帖』
August 27, 2016
視聴率20%以上の人気を誇る、現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説『とと姉ちゃん』。
主人公・小橋常子のモデルとなっているのは、故・大橋鎭子(おおはし しずこ)さん。その大橋さんが天才編集者である故・花森安治(はなもり やすじ)さんと共に創刊したのが雑誌『暮しの手帖』です。
二人が『美しい暮しの手帖』として第1号を創刊したのは、昭和23(1948)年。ファッションや料理、編み物、収納術など衣食住に関わる「生活の知恵」を紹介し、主婦の強い味方として、現在に至るまで発刊は続いています。暮しの手帖社さんのサイトには、「防空壕のなかで、自分が見たい、知りたいと思うことを本にすれば、戦争で学校にも満足に行けなかった多くの女性たちに喜んでもらえるだろう」という大橋さんの思いと、戦争への反省から「一人ひとりが自分の暮らしを大切にすることを通じて、戦争のない平和な世の中にしたい」という花森さんの思いが綴られています。
もちろん、住まいにまつわる様々な特集記事も組まれました。実際、先日も『とと姉ちゃん』では、台所特集が取り上げられていましたが、当時の『暮しの手帖』20号(昭和28年)以降でも、こんな記事が掲載されています。
「小さくつくって大きく暮らす」キノイエの思想に非常に重なる部分があり、とても興味深い内容です。
また、経済成長とともに物が出回り始めると、どれが役に立つ商品かを広く消費者に伝え、また本当に良いものをメーカーに製造してもらうためにも、商品テストを実施。生活者の立場に立った実証主義のテストは多くの読者の高い評価と支持を得ることに成功し、最大発行部数が90万部を超える国民的雑誌に成長しました。
なかでもこの雑誌の特徴として有名なのは、一切広告を掲載しないというスタイルを選択し貫いてきたことです。(一説では、倒産の危機の際一度だけ掲載の事実があるようです)
理由は2つ。編集長の花村さんの「一つの文字から一枚の写真、小さなイラストまで、雑誌の全ての部分を自分達の目の届く所に置いておきたい」という思いと、広告を載せてしまうと、商品の正しい批評や紹介がやりにくいという理由です。
そして、この商品テストの徹底ぶり、スケールの大きさが違います。
昭和44年の第99号「自動トースターをテストする」では、トースター33台を購入し、1台あたり2000枚ずつ実際に焼いて、焼け具合や耐久性をテストしています。実に4万3088枚もの焼かれた食パンが山積みされた写真は圧巻です。
また、製品の品質が悪かったり、広告に記載された性能を十分に発揮できないとなれば、入念なテスト結果と共にその製品を徹底的に糾弾をします。その代表的なエピソードが、昭和43年発刊の98号「愚劣なる食器洗い機」と名付けられた記事です。
当時、発売されて間もなかった各社の「食器洗い機」は高価である上に、食べ残しがすすぎ切れなかったりと、欠点が目立ち劣悪でした。二人にとって、そうした製品を世に出すことへの怒りは強く、発売された各社の製品を、その号以降も何回かに分けて軒並みテストし、詳細に事実を伝えています。特に、横倒しにされた食器洗い機の写真は、社会的に大きな反響を呼びました。
これから連続ドラマの中でも佳境を迎え、この商品テストの場面が出てきます。ドラマの中では、純粋にテスト結果を読者に伝えていこうとする主人公と、それをあらゆる手で妨害工作を行う大手メーカーとの壮絶な戦いが描かれていくようです。
そんなことから、ふと、現在、住宅業界で起きている激しい価格競争とイメージ・広告競争の様子に目をやると、様々な思いがめぐってきました。情報が巷に溢れすぎた結果、お客様にとって「暮らしを守る本当のいい家」についての判断、これがとても難しい時代になったと感じます。何を選んでいいかわからない。住んでみないと答えが出ない。しかし、買った後では取り返しがつかない。そんな買い物の筆頭が住まいです。だからこそ、この『暮しの手帖』のように、宣伝やイメージ戦略に踊らされず、客観的な厳しい目をもって住宅産業の構造や作り手の違いが語られる日が来れば、消費者の皆さんにとってこれほどの大きなメリットはないのではないか?と思う今日この頃です。
高さを節約すると
August 23, 2016
塩屋新田の家の二階天井は、屋根勾配に沿って地元糸魚川産の杉板がふんだんに貼られています。
その杉板の天井は、水回りスペースの上に空いたわずかな隙間の先にまで伸びています。これは、視覚的な広がりをつくる、小さな邸宅設計の基本的な技でもあります。
そして、その隙間部分は、そのまま小屋裏空間として、大容量の収納スペースになっています。
キノイエは、小さくつくって大きく暮らす――引き算の設計が基本です。この小屋裏収納の確保にあたっては、面積的な引き算だけでなく、合理的な階高の引き算をした結果生まれた”おつり”を有効利用してつくられました。だから、このスペースをつくるために構造的な足し算は一切ありません。コストを上げずに収納をプラスしました。ほんのわずかな階高の節約(といっても、この方が視覚的にも省エネの観点からも理に適っています)も逃さない設計が、想像以上の使い勝手を実現させています。
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行き止まりをつくらない設計
August 22, 2016
小さくつくって大きく暮らす――引き算する設計で最も必要なことは、ムダな動線をつくらないことです。
そのためには、住まいの中に極力行き止まりをつくらないことです。例えば、塩屋新田の家では、いちばん長く過ごす場所でもあるリビングダイニングの空間に、以前のブログでもご紹介した小さなパントリー(キノイエオリジナル「箱パントリー」)を中心に周りを回遊できるように設計されています。
小さな空間にキッチンとパントリーを設置すれば、少しでも収納を確保したくなるため、大抵キッチンの奥は行き止まりになるのが普通の設計です。しかし、そこにほんのわずかでも人が通れる空間を設けることで、リビングダイニングとの連続性が生まれ、想像以上の自由度と開放感が生まれます。
開放感は面積ではありません。行き止まりのない、自由度がある動線をつくることにヒントがあるのです。
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