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解説「パッシブハウス」その3(最終回)

December 22, 2016

3回シリーズでお贈りした「パッシブハウス」の解説も本日が最終回です。

 

 

さて、ようやく弊社が昨年、富山県黒部市で施工した「前沢パッシブハウス」の話をしたいと思います。

 

 

前沢パッシブハウス|黒部市|YKK|上越市・妙高市・糸魚川市の注文住宅|木の家づくり工務店|キノイエ|

 

 

設計は日本におけるパッシブハウスの第一人者でもある森みわ氏(キーアーキテクツ代表)。森みわ氏は、日本国内でパッシブハウスの普及啓蒙を推進する団体「一般社団法人パッシブハウスジャパン」の代表理事も務められております。そして、この建物の発注者(=お施主様)はYKK不動産株式会社様。つまり、国内サッシの大手メーカーであるYKK AP株式会社をグループに持つYKK株式会社が関与する特別な思い入れのある建物です。そして、その陣頭指揮をとったのは、グループ連結売上高7,400億円超、社員数4万4,000名を超える巨大組織のトップである吉田会長ということからもこの建物には並々ならぬ思いが込められていることが想像できます。

 

 

前沢パッシブハウス|黒部市|YKK|上越市・妙高市・糸魚川市の注文住宅|木の家づくり工務店|キノイエ|

 

 

YKK吉田会長と森みわ氏との雑誌対談での出会いから始まったこの「前沢パッシブハウス」プロジェクト、実はこの業界においてはとても革命的な出来事でした。これまで日本の住宅の窓性能は世界的にみて非常に遅れをとっているとされてきました。しかし、3.11東日本大震災を契機に、前述した国内のエネルギー事情に対する不安と省エネ機運の高まりも合わせ、YKK AP社は弱点であった窓性能の強化に全社をあげて取り組むことを決断。その努力の結晶として登場したのが、「APW430」シリーズと呼ばれる高性能樹脂窓でした。ファスナーに始まり、アルミサッシが主力製品であった巨大企業が次世代標準に選んだ窓が、熱伝導率を極力低下させた「樹脂窓」ということ自体が非常に革新的であり、吉田会長率いるYKKグループが本気で世界に通用する窓をつくろうとした情熱がひしひしと伝わってきます。

 

 

前沢パッシブハウス|黒部市|YKK|上越市・妙高市・糸魚川市の注文住宅|木の家づくり工務店|キノイエ|

 

 

そして、現在YKKが本社所在地としている富山県黒部市に建設されたのが、この「前沢パッシブハウス」なのです。前々回のブログ記事「その1」でも触れましたように、パッシブハウスはその段違いの高性能基準により、国内にはまだ10数件程度しか施工実績がない建物です。その中にあって、「前沢パッシブハウス」はいくつかの点で国内においてエポックメイキング的な位置づけの建物として業界から注目を浴びており、これまでにも数多くの建築関係者がこの建物に視察に訪れ、業界誌や住宅会社のブログ記事としても取り上げられております。

 

 

その大きな特徴は以下の2点です。

 

 

その1

【国産サッシを使用した日本初のパッシブハウス認定】

 

実は、日本国内でこれまで認定を受けたパッシブハウスには全て、海外製品の高性能木製サッシ等が使用されていました。つまり、これまではあまりの性能ギャップにより、国産サッシでは認定が取れないという事実がありました。しかし、この前沢パッシブハウスでは、前段で触れたYKK AP社が自信をもって世に送り出した高性能樹脂サッシ「APW430」(トリプルガラス仕様)を採用することで、国産サッシとして日本初となるパッシブハウス認定を受けた建物になります。このニュースは、業界に大きな衝撃を与えました。

 

 

前沢パッシブハウス|黒部市|YKK|上越市・妙高市・糸魚川市の注文住宅|木の家づくり工務店|キノイエ|

 

 

その2

【気候条件の厳しい北陸エリアでの初のパッシブハウス認定】

 

パッシブハウスは、高い外皮性能(断熱気密性能)だけではなく、夏季の日射熱の遮蔽と冬季の日射熱取得という、文字通り「パッシブ(受動)」によるエネルギーのコントロールが非常に重要になってきます。その点、富山県をはじめとする北陸地域は冬の気候の影響で日照時間・量が不足しやすく、日射熱取得という点で認定数値を取るのが非常に厳しいとされてきましたが、設計の森みわ氏、YKK AP、そしてドイツパッシブハウス研究所とが連携しながら設計を進めることで、方位別に最も最適な窓を解析で算出。同社の高性能トリプルガラス樹脂窓「APW430Kr」と真空トリプルガラス樹脂窓「APW330真空トリプル」を採用し、北陸地域初のパッシブ認定を受けることに成功しました。

 

 

前沢パッシブハウス|黒部市|YKK|上越市・妙高市・糸魚川市の注文住宅|木の家づくり工務店|キノイエ|

 

 

認定された性能数値は、熱損失係数(Q値)=0.86(W/㎡K)、外皮平均熱還流率(UA値)=0.19(W/㎡K)、暖房負荷=15kwh/㎡・年という値になります。現在、日本の次世代省エネ基準で示されている北陸地域の性能値は、外皮平均熱還流率(UA値)=0.87(W/㎡K)以下、北海道基準までレベルを上げても0.46(W/㎡K)以下とされていますので、その性能差は歴然です。専門的な数値になりますので分かりにくいかもしれませんが、感覚的な表現でいうと「化け物」レベルの性能値です(笑)。どれだけ凄い数値であるかということを言葉で表すのは難しいですが、外気が0℃以下の環境でも、建物内に入った瞬間、その人の体温だけで室内温度が上がると聞いたら、その意味が伝わるのではないかと思います。それだけ、現在の日本国内の「高気密高断熱住宅」という基準が、世界レベルで見た場合にあまりにも説得力が薄いという事実に気付いていただければ、それだけでも皆様にとって大きな収穫になるのではないかと思います。

 

 

前沢パッシブハウス|黒部市|YKK|上越市・妙高市・糸魚川市の注文住宅|木の家づくり工務店|キノイエ|

 

 

そして、ここで力説したいのは、その設計数値を現実に施工で実現することは非常に至難の業であるという点です。本体の断熱仕様も通常の住宅の施工レベルとは比較にならない高度な技術を要求されます。壁はフェノールフォーム80mm+セルロースファイバー200mm(東西)/240mm(北)がメインで、天井はセルロースファイバー300mmと断熱材の厚みとその収まりは通常の住宅建設とは比較にならない複雑さ。その上で非常に高レベルでの精度を要求されます。今回、前沢パッシブハウスの隙間相当面積(C値)は0.1㎠/㎡でした。これは、40坪の家に換算するともはや切手1~2枚分程度の隙間、つまり、ほぼ「隙間なし」と呼べるレベルの施工精度です。私たちカネタ建設の技術力が問われるデリケートな部分でもありましたが、建築スタッフたちの努力により、見事に設計の要求レベルに応える建物として完成させることができたことで、YKK AP社をはじめとする関係者の皆様より非常に高い評価をいただくことができました。(このことが、現在YKK様よりK-TOWN二期工事にて社員寮6棟同時施工を任されるきっかけにもつながっていると思います)

 

 

前沢パッシブハウス|黒部市|YKK|上越市・妙高市・糸魚川市の注文住宅|木の家づくり工務店|キノイエ|

 

 

YKK APが社のプライドをかけて挑んだ日本初オール国産サッシ使用、かつ気象条件の厳しい北陸エリア初のパッシブハウス認定という、前例のない住宅建設は、絶対に失敗が許されないという点で、同時に弊社の社運を賭ける案件でもありました。設計の森みわ氏曰く「まるで三輪車のメーカーが、いきなりF1の設計図を渡されて作ったみたいね(笑)」と表現。それだけに、このパッシブハウスの成功は、私たちにとって大きな転換点となりました。この建設に至る過程で、上越地域でいちばん最初に省エネ建築診断士の資格を4名同時に取得するなど、カネタ建設の建築スタッフは、温熱環境に関する知識レベルを飛躍的に向上させ、また前例のない高度な施工経験を通じて、地域の高性能エコ住宅を推進するトップランナーとしての確かな手応えを得ることができました。

 

 

この成功の裏には、多くの関係者の皆様の支援があります。吉田会長をはじめとするYKKグループの多くの関係者の皆様、森みわ代表、青山さんをはじめとするキーアーキテクツの皆様、そして、きっかけをつくっていただいたオーガニックスタジオ新潟の相模社長・・・他にもここではご紹介しきれないほどの素晴らしいご縁と、挑戦するチャンスを与えて下さった多くの関係者の皆様に、あらためてこの場をお借りして心から感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

 

 

キーアーキテクツ森みわさんとカネタ建設スタッフ

 

 

3回に渡り解説してまいりしました「パッシブハウス」に関するブログ記事、最後までお読みいただきありがとうございました。これから住まいづくりを考える皆様にとって、少しでも知っておいて損をしない内容の情報をお伝えしたつもりですが、分かりにくい点もあったかもしれません。このブログでは、これからも、時々こうした住宅の性能知識や、住宅業界の真実の部分をお伝えすることで、皆様のお役に立てればと考えています。

 

 

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