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家族のタイムテーブル


June 21, 2017

June 21, 2017

住宅建築業界の中で、現在5万部を超える人気の書籍となっている『住まいの解剖図鑑』。もともとは住宅設計を学ぶ建築系の学生向けに書き始められたものが、設計実務を始めたプロ向けの基本を学ぶコンテンツとして進化、さらには、「もしかすると、これから自宅を建てようとする一般の人にも、最低限身これくらいの知識は身につけてもらってもいいのでは?」との思いから加筆修正が加えられて生まれたのが本書です。

 

 

 

 

そのため、本当にいい家を建てたいと考えている方の中で、非常に敏感な方は既にこの書を手にしているかもしれません。これを読めば、家づくりで本来見失ってはいけない非常にコアな部分に触れることができ、コンビニ化した住宅業界のパッケージ住宅を買うことが、いかに勿体ない買い物であるかということに気付かされます。あるいは反対に、「中途半端なプロ」が陥りやすい「過剰設計」の落とし穴についても厳しく指摘しているバランスの取れた指南書です。私たちから見ても非常にユーザー目線で書かれた良書だといえます。

 

 

著者は、住宅設計の第一人者である故吉村順三氏の下で9年間学んだ建築家の増田奏(ますだ すすむ)氏。「家族が日々の暮らしを営み、生命を育む「住まい」に何より大切なのはその場所が「心地よい空間」であること。」と提唱する氏の著書の中には、実は、私たちキノイエが大切にしている住まいの要諦をほとんど網羅しており、私たちにとっても非常にわかりやすい住宅づくりの教科書といっても過言ではありません。

 

 

特に、「心地よい家のプランは「引き算」でつくる」という増田氏の設計理念は、キノイエの「小さくつくって大きく暮らす」「引き算の設計」そのもの。本日は、そんな増田氏の著書の中から、独自の視点で書かれた、とても参考になる項目を一つご紹介したいと思います。

 

 

その名も「家族のタイムテーブル」

 

 

著書の中で、増田氏はこう述べています。(以下は、ウェブ上でオープンになっている増田氏の文書を引用させていただいています)

 

 

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私は必ずご家族のタイムテーブルを書いてもらっている。家を建てる時点での家族構成や年齢にぴったり合うようにつくり込んでしまうと、早ければ5年で住みにくい家になってしまうことさえある。人間は必ず年をとるものだからだ。

 

 

 

 

そこで私がお勧めしているのは「割り算」。すなわち子どもの成長、あるいは両親との同居の可能性などもあらかじめ想定して間取りの可変性を確保しておこうというものだ。

 

 

例えば部屋にはドアを2つ付けておく。子ども部屋なら小さいうちは2人で1つの部屋でいいが、自立心を持ち始めたり、受験の時期が来たら間仕切って個室2つに分けられるようにしておく。子どもたちが成長して巣立った後は、もとの1部屋に戻してもいいし、別の空間として利用することを考えてもいい。部屋に出入り口が2つあると可変性はもちろん、住まいの動線に回遊性が生まれ、格段に住みやすくなる。

 

 

可変性の確保や間取りをルーズに考えるという発想は、そもそも日本の伝統的な住まい方だ。今でこそ日本の家もダイニングやリビング、寝室など、空間の用途によってプランニングされるようになったが、かつては6畳間、8畳間など、空間の広さだけが認識され、部屋名などなかった。昼間は卓袱台を出して家族でご飯を食べ、近所の人がやってきて一緒にお茶を飲み、学校から帰ってきた子どもが宿題をする空間で、夜になると布団を敷いて寝ていたのだ。

 

 

こうした暮らし方は、今でもそれとなく伝承されている。例えば小学生ぐらいまでの子どもは自分の部屋ではなく、両親と一緒に、いわゆる川の字になって寝ているケースが多いだろう。欧米の住宅では考えられないことだが、この柔軟で臨機応変な住まい方こそ日本の住宅の特長だ。

 

 

家づくりでは、建築家やハウスメーカーなどの専門家の提示するさまざまなプランを検討する中で、自分たちがどのように新しい家で暮らしていくのかがだんだんと整理されてくる。その過程で大切なのは、専門家や知人が勧めるからなどと人まかせにするのではなく、最後は自分たち家族でこのプランにすると「決心」することなのだ。

 

 

車なら実際にいろいろな車に試乗し、比較検討した上で決められるが、家の場合は、いろいろな家に同時に住んでみて実際の住み心地を比較検討して決めることなどできないからだ。自分たちで決めたのだということで、この家でこんな暮らし方をしていくとの覚悟もできる。かくして、わが家はまぎれもなく自分たち家族にとってかけがえのない最も心地よい空間になっていくのではないだろうか。

 

 

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いかがでしょう。家づくりは、一生に一度と考えたとき、相手が「住宅のプロ」だと過信し、自分たちの思考を止めて全てを委ねてしまうことは、いずれ大きな後悔につながります。こうした視点を持つことで、皆様にとって本物に相性の良い家づくりパートナーを見分けることができるのではないでしょうか。

 

 

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